CarPort ドキュメント

ソフトウェアドキュメント

💡 このドキュメントはCarPortバージョン3.2を対象としています。それより古いバージョンや新しいバージョンでは、機能が異なる場合があります。

基本設定&出力テスト

基本設定では、スロットルバルブやステアリングアングルセンサーなどの部品を再学習させます。出力テストでは、アクチュエーターを個別に作動させて機能を確認します。

どちらの機能もECU内で実際の動作を開始させるため、各セクションの安全上の注意事項を必ず守ってください。コーディングとアダプテーションと同様に、事前にセキュリティアクセスSFDのロック解除が必要になる場合があります。

基本設定

基本設定

基本設定(Basic Settingsとも呼ばれます)は、ECUに初期化またはキャリブレーションのルーチンを実行させる機能です。その際ECUは、機械部品や電子部品を定められた初期状態にしたり、現在の位置や特性値を学習し直したりします。

手動で値を変更するアダプテーションとは異なり、基本設定ではECU自体が自動化されたプロセスを実行します。CarPortは開始コマンドを送るだけで、実際のキャリブレーションはECUが自律的に行います。

基本設定が必要なケース

基本設定は通常、部品の交換や修理の後に、ECUが新しいコンポーネントを正しく認識してキャリブレーションできるようにするために必要です。よくある用途は次のとおりです。

  • スロットルバルブの学習:スロットルバルブの交換または清掃後は、ECUが機械的なストッパー位置(全閉/全開)を測定し直す必要があります。
  • ステアリングアングルセンサーのキャリブレーション:ステアリングや足回りの作業後は、ESPや運転支援システムが正しく動作するよう、ステアリングアングルセンサーのゼロ点を再学習させる必要があります。
  • 電動パーキングブレーキ(EPB):ブレーキパッドを交換する前に、パーキングブレーキをメンテナンスモードにする(ピストンを戻す)必要があります。取り付け後は、基本設定で再び有効にしてキャリブレーションします。
  • 冷却回路のエア抜き:冷却システムに冷却水を充填した後(例:ラジエーターやタイミングベルトの交換後)、ECUが自動エア抜きサイクルを開始し、ポンプとバルブによって回路内の気泡を排出します。

⚠️ 注意:基本設定はECUの機能に直接作用します。特に安全に関わるシステム(ブレーキ、ステアリング、エアバッグ)では、誤ったルーチンや不適切なタイミングでの実行が危険な状態を招くおそれがあります。基本設定は、どのルーチンを開始するのかを理解している場合にのみ実行し、前提条件(例:エンジン停止、ステアリングを直進位置にする、車両を水平な場所に置く)を守ってください。

手順は診断プロトコルによって異なります。

KWP1281 / KWP2000での基本設定

旧来のプロトコルでは、基本設定は測定ブロックと同様に、番号付きのブロックにまとめられています。

手順

  1. リストから目的のブロックを選択するか、ブロック番号を手動で入力します(記述データがない場合)。
  2. 開始をクリックします。
    • KWP1281:CarPortはまず、選択したブロックの測定値を読み取って表示します。これらの値は通常、基本設定と直接関係しており、処理の監視に使用します。
    • KWP2000:CarPortはECU上でルーチンを開始しますが、基本設定はまだ有効にしません。利用可能な場合は、関連する測定値が表示されます。
  3. 有効化をクリックして、実際の基本設定を有効にします。ECUが必要なキャリブレーション手順(例:スロットルバルブをストッパーまで動かす、センサー値を測定する)を実行します。
  4. 表示される測定値を見ながら、基本設定の進行状況と結果を確認します。
  5. 完了すると、CarPortに「基本設定完了」というメッセージが表示されます。
  6. 無効化をクリックして基本設定を終了し、通常の動作モードに戻ります。

💡 KWP1281の特記事項次のブロックボタンを使うと、基本設定を終了せずに次のブロックへ直接移動できます。一部のECUでは、ブロックが互いに依存しているため、決められた順序で処理する必要があります。詳しくは、記述データや整備資料の指示に従ってください。

UDSでの基本設定

UDSプロトコルを使用するECUでは、基本設定は名前付きのルーチンとしてODX記述データに登録されています。

手順

  1. CarPortが、ODXデータから利用可能な基本設定をわかりやすい名称(例:「スロットルバルブアダプテーション」「ステアリングアングルセンサーのキャリブレーション」)で表示します。目的のルーチンを選択します。
  2. 開始をクリックしてルーチンを開始します。基本設定はただちに有効になります。KWP1281/KWP2000のような独立した有効化の手順はありません。
  3. 表示される測定値で進行状況を監視します。
  4. 正常に完了すると、CarPortに「基本設定完了」というメッセージが表示されます。

基本設定中の測定値(UDS)

出力テストと同様に、基本設定の実行中は、ECUが提供している場合に限り、CarPortがステータス情報を自動的に表示します。

測定値 説明
基本設定のステータス 現在の状態(実行中、完了、中断)
操作指示 ECUからユーザーへの指示(例:「ステアリングを左に回してください」)
実行中のルーチン 有効なキャリブレーションルーチンの名称
現在のテストステップ 複数段階からなる手順の中での現在位置
残りのテストステップ 完了までに残っているステップ
中断の原因 ルーチンが途中で終了した場合の理由

さらに、任意の測定値(例:エンジン回転数、温度、センサー値)を監視対象に追加して、基本設定中にその他の関連パラメーターも確認できます。

中断とエラーメッセージ

基本設定は、停止ボタンでいつでも手動で中断できます。ECUがルーチンを自ら中断した場合(例:前提条件が満たされていない、故障が検出された)は、「ECUにより基本設定が中断されました」というメッセージが表示されます。その場合は、表示された測定値と故障メモリを確認して原因を調べてください。

出力テスト

出力テスト

出力テストでは、ECUの個々のアクチュエーターを狙って作動させ、その電気機械的な機能を通常の走行時の制御から切り離して確認できます。アクチュエーターとは、ECUが物理的な動作を行わせるために能動的に駆動するすべてのコンポーネントのことで、バルブ、リレー、電動モーター、ランプ、ソレノイドバルブなどがあります。

代表的な用途:

  • トラブルシューティング:アクチュエーターが駆動信号に反応するかどうかを確認します(例:リレーがカチッと鳴るか、モーターが回るか)。
  • 修理後の機能確認:新しく取り付けた部品が正しく動作することを確認します。
  • 漏れ点検:圧力テストのために、個々のバルブを狙って作動させます。

⚠️ 注意:出力テスト中は、アクチュエーターが通常の制御ループとは無関係に駆動されます。車両が安全に停車していて、人に危険が及ばないことを確認してください。一部のテスト(例:冷却ファンのアフターラン、燃料ポンプ)では、予期しない動きや音が発生することがあります。

CarPortでは、診断プロトコルに応じて、シーケンシャル出力テストと選択的出力テストの2つの動作モードを使い分けます。

シーケンシャル出力テスト(KWP1281 / KWP2000)

シーケンシャル出力テストでは、ECUが利用可能なすべてのアクチュエーターをあらかじめ決められた順序で1つずつ作動させます。個々のアクチュエーターを順に切り替えながら、その反応を確認できます。

手順

  1. 接続したECUで出力テストタブを開きます。
  2. シーケンスの最初のアクチュエーターが自動的に作動します。CarPortに、現在作動中のアクチュエーターの名称が表示されます(記述データがある場合)。
  3. 車両の反応(例:リレーの作動音、フラップの動き、ランプの点灯)を確認します。
  4. 次へをクリックして、シーケンスの次のアクチュエーターに進みます。
  5. アクチュエーターをもう一度作動させるには、有効化をクリックします。
  6. 利用可能な場合は、アクチュエーターの状態を示す関連の測定値(例:消費電流、フィードバック信号)が表示されます。

💡 :利用可能なアクチュエーターの順序と数は、すべてECUによって決まり、変更することはできません。

選択的出力テスト(KWP2000 / UDS)

選択的出力テストでは、シーケンス全体を順に進めなくても、特定のアクチュエーターを選んで個別に作動させることができます。特定の部品だけを確認したい場合に特に効率的です。

KWP2000の場合

  1. スキャン開始...をクリックして、ECUが対応しているアクチュエーターを調べます。CarPortは利用可能なテストをスキャンし、一覧で表示します。
  2. リストから目的の出力テストを選択します。
  3. 開始でテストを開始します。
  4. 反応と、表示される測定値(利用可能な場合)を確認します。
  5. 停止でテストを終了します。

UDSの場合

UDSプロトコルを使用する比較的新しいECUでは、さらに多くの機能を利用できます。

  1. CarPortがODX記述データに基づいて利用可能な出力テストを自動的に調べ、わかりやすい名称で一覧表示します。
  2. 目的のテストを選択します。
  3. アクチュエーターによっては、駆動パラメーター(例:時間、強さ、方向)を設定できます。設定できる範囲は、ECUによって異なります。
  4. 開始でテストを開始し、停止で終了します。

テスト中の測定値(UDS)

出力テストの実行中は、ECUが提供している場合に限り、CarPortがステータス情報を自動的に表示します。

測定値 説明
出力テストのステータス 現在の状態(実行中、完了、中断)
操作指示 ECUからユーザーへの指示
実行中のルーチン 有効なテストルーチンの名称
現在のテストステップ 複数段階からなるテストの中での現在位置
残りのテストステップ 完了までに残っているステップ
中断の原因 テストが途中で終了した場合の理由

さらに、任意の測定値(例:消費電流、温度、エラーフラグ)を監視対象に追加して、テスト中にその他の診断データも確認できます。

出力テストの終了

すべてのテストステップが完了すると、CarPortに「出力テスト完了」というメッセージが表示されます。ECUによってテストが途中で中断された場合(例:故障の検出や安全のための停止)は、「ECUにより出力テストが中断されました」というメッセージが表示されます。